今度、サッカー検定2級試験(現在3級)に挑むために勉強を再開する。

著者のミケルス氏(故人)は1974年のW杯においてヨハン・クライフを
擁するオランダ代表を率いて一躍「オレンジ旋風」を巻き起こし、88年
欧州選手権でオランダに栄光をもたらした20世紀を代表する名将の一人。
クラブチームにおいてもバルセロナ等、数々の有名クラブを率いている。

本書では、ミケルス氏の経験をベースにして「チーム作り」に何が必要か
という論点を技術・心理・育成・トレーニングといった点から述べたもの。
著者は監督だけではなく協会の人間として関わっていた経験を持っている
ことから、あくまで体験談だけではない、客観的な側面も多く有している。

74年のオランダ代表は「トータルフットボール」として語り継がれるチームであり、
攻撃的なフットボールを展開し、そのスタイルは現在のサッカー界において多大な
影響を及ぼしているといっても良いだろう。

ボールの受け手でなく出し手に対してプレスをかけていくスタイルは、
後の「ゾーンプレス」に組織化されて普及しており、あるいは自チームが
ボールを保持することでゲームを支配して優位に試合を進めていくという
「ポゼッションサッカー」の形もクライフ擁する74年のオランダ代表の
時代を経て、現代のドリームチームことFCバルセロナ等に受け継がれてる。

私が本書を読んでいて、非常に関心を持ったのは次の2点であった。

1つはミケルス氏は「ポゼッション」と「カウンター」という2つ異なる
チーム戦術を採用するチーム作りを行う際のガイドラインを示しているが、
彼が採用したポゼッションに比重したチーム作りはカウンターに比べると
難しいことを述べている点にある。

というのも、堅守速攻のカウンターのと比較すると、ポゼッションに比重を
おいたパスサッカーはトレーニング戦術的な熟成を要するからであるとした。
選手たちにおいてもコーチング、リスクを冒して攻めるというメンタルの強さ
を要求される。ミケルス氏はそれを育成年代の頃から積み重ねることを再三
主張しユースプログラムの発展が必要不可欠であるとした。

近年バルサの成功もあって、日本でもポゼッションサッカーを志すチームが
増えてきているがこうした指摘を踏まえるとたしかに足りない基盤の部分で
難しい部分はあるのかもしれない(川崎もまたパスサッカーへの変貌を志し
今シーズンを望んでいるが、難しさに直面している)。。

もう1点は先述の内容とも重複してくるが、育成に関して示した年代別ガイド。
ミケルス氏はサッカーを習得する最も最適な方法として路上サッカーを出して、
この「路上サッカーに代わるもの」を限られた時間の中でいかに作りだすかを
テーマにガイドを提示している。

よく、子供の頃(10歳以下)から戦術を学ぶべきか否かという話があるが、
ミケルス氏が紹介したガイドでは5歳のころに小さいコートでキーバーなしの
4VS4で基礎を磨き、徐々に人数とピッチを広げ戦術を少しずつ理解させている。
そこから14歳以降から「勝つ」ことへの思いやメンタルの強化も視野に入れて、
最終的には成人サッカーに繋げていこうとする。そして、最後段階であり成人
サッカーへの第一歩としての18~21歳までの年代についても考察している。

最近12歳までの大会で8人制が採用されたり、欧州強豪クラブのスクールが
日本でも開かれる等、環境も変化してくる。日本サッカーの発展において、
A代表だけでなく、幼年期からの育成方針・環境を充実していかねばならぬ。
そうした意味で私も育成関係の本を読んでたりしてこれもまた勉強になった。

解説のディティールが細かさに加え、多くの経験談も盛り込んで充実した内容で、
非常に面白かった。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索