牧田幸裕「ラーメン二郎にまなぶ経営学-大行列をつくる26の秘訣」
2011年4月1日 読書
院生時代に「二郎はラーメンではない、二郎という食べ物だ」という
台詞を何度聞いてきたか。例外にもれず、高田馬場周辺もジロリアン
は多数生息し、私の研究科にもエンバジェスト(伝道師)がいたのだ。
本書で題材に扱っているのは、そんな熱狂的なファンを多数抱える
ラーメン二郎である。ジロリアンにして元コンサルタントの著者は、
この熱狂の源泉の分析について、経営学の視点から読み解いている。。
この手の構成は何気に昨今のトレンドにも合致。マイケル・サンデル
教授の名を広く知らしめた「ハーバード白熱授業」の面白さの1つは、
サンデル教授が哲学の理論を我々にも馴染みのある日常の出来ごとに
置きかえることで、学生たちを対話に引きずり込んでいる手法である。
また、ゆうすけ君が一向に感想を書いてくれない「もしドラ」でも、
ドラッガーのマネジメントの理論を高校の野球部の運営という形式に
置き換えて物語を展開したことが話題を呼んでいる。このように、
一見難しいと思われる理論・考え方を具体的な事例に落とし込む形が
身近に楽しめるということで、ビジネス書籍のコーナーで異彩を放つ。
ジロリアンにして経営学者の著者は、ラーメン二郎の魅力を分析すべく、
外食産業・ラーメン屋という市場レベルからスタートし、そこから具体的な
ラーメン二郎の事業展開・組織体制、そしてラーメンそのものの部分にまで
視点を降ろしている。二郎の解説を行いつつ、同様のモデルを展開している
具体的な事例を並行して紹介している。事例がバラエティ富んでいるので、
非常にイメージをつかみやすく、なおかつ難しい言葉もほぐしながら書いて
いるので、経営学やコンサルティング手法に馴染みのない人も読めるだろう。
■ ラーメン二郎の武器は「尖り」にあり。。
本書を読んで、ラーメン二郎の魅力として大きな強みはその比類なき
強烈な「尖り」であるということを改めて実感した。冒頭に私も書いた
「二郎は二郎という食べ物」という強烈な個性こそが最大の武器となる。
数あるラーメンの中において、部分的には似通ってくるかもしれないが、
二郎は特殊すぎてどこにも括ることができない=競合相手がいない状態だ。
本書の言葉を引用させてもらえば「唯一無二のポジショニング」を確保する。
この既存の競争ルールから離れる戦略=ブルーオーシャン戦略を展開できる
のが、二郎の強みであり、「二郎は~」とは最大の金看板なのだとわかる。。
独自路線はともかく、それに対して顧客がいなければ意味がない。二郎がもつ
もうひとつの武器こそ二郎をこよなく愛する「ジロリアン」を抱えていること。
著者による分析は、二郎の作りだす「世界観」と「価値観」がジロリアン発生
に大きな影響を与えているようだ。先述の「尖り」がそのコアにあることは、
言わずもがな。あの二郎なる食べ物は、店舗近くの大学に通う大学生たちの
ニーズを満たしてきたことで形成されており、その二郎という食べ物を食する
(=攻略する)というミッションに挑むことが忠誠心と一体感を生むと著者は
指摘している。なるほど、二郎とは1つの参加型ムーブメントなのかもしれん。
■ 日本に足りないのは二郎的な「尖り」なのか?
著者の指摘の中で非常に納得したのは、こうした「尖り」がグローバル経済下の
日本の映像作品・モノづくり・政治家等に足りない部分ではないか。最近10年が
特に顕著かもしれないが、マーケティング分析が広く利用されることになって、
何となくトレンドや流行に徹したもの、もしくは総合性を重視して万能なモノが
増えてきて、正直なところ色が薄まっている気がする。悪く言えば、媚びている。
だが、例えば、Appleは量販店に媚びることなく、自社製品に絶対的自信を持ち、
スティーブ・ジョブスという最強のセールスマンがそれを自ら伝道しているのだ。
また、メガマックを思い出してもらいたい。今よりメタボだ何だのという言葉が
大きく話題になっていたのに、突き抜けた結果、話題を呼んで成功を収めた。。
日本製品には品質の良さというブランドイメージはあるが、逆に色はみえてこない。
世界という幅広いフィールドでモノづくりが活路を見出すためには「尖り」を出す
ことが重要なのかもしれない。ガラパゴス化とは異なる良い意味での逸脱、脱却を。
よくアイドルを見ていて思うことが「突き抜ければ、それは個性となる」ではないが、
政治家も含めて「突き抜ける」勇気を持てるかどうかなのかもなぁ。それがブレのない
姿勢につながると思うだけに。
それ以外にも、本書では二郎の規模拡大や経営体制等についても書かれていることから
「二郎」を通じて、非常に様々な知識等を得ることが楽しめる。これは本当、おススメ。
台詞を何度聞いてきたか。例外にもれず、高田馬場周辺もジロリアン
は多数生息し、私の研究科にもエンバジェスト(伝道師)がいたのだ。
本書で題材に扱っているのは、そんな熱狂的なファンを多数抱える
ラーメン二郎である。ジロリアンにして元コンサルタントの著者は、
この熱狂の源泉の分析について、経営学の視点から読み解いている。。
この手の構成は何気に昨今のトレンドにも合致。マイケル・サンデル
教授の名を広く知らしめた「ハーバード白熱授業」の面白さの1つは、
サンデル教授が哲学の理論を我々にも馴染みのある日常の出来ごとに
置きかえることで、学生たちを対話に引きずり込んでいる手法である。
また、ゆうすけ君が一向に感想を書いてくれない「もしドラ」でも、
ドラッガーのマネジメントの理論を高校の野球部の運営という形式に
置き換えて物語を展開したことが話題を呼んでいる。このように、
一見難しいと思われる理論・考え方を具体的な事例に落とし込む形が
身近に楽しめるということで、ビジネス書籍のコーナーで異彩を放つ。
ジロリアンにして経営学者の著者は、ラーメン二郎の魅力を分析すべく、
外食産業・ラーメン屋という市場レベルからスタートし、そこから具体的な
ラーメン二郎の事業展開・組織体制、そしてラーメンそのものの部分にまで
視点を降ろしている。二郎の解説を行いつつ、同様のモデルを展開している
具体的な事例を並行して紹介している。事例がバラエティ富んでいるので、
非常にイメージをつかみやすく、なおかつ難しい言葉もほぐしながら書いて
いるので、経営学やコンサルティング手法に馴染みのない人も読めるだろう。
■ ラーメン二郎の武器は「尖り」にあり。。
本書を読んで、ラーメン二郎の魅力として大きな強みはその比類なき
強烈な「尖り」であるということを改めて実感した。冒頭に私も書いた
「二郎は二郎という食べ物」という強烈な個性こそが最大の武器となる。
数あるラーメンの中において、部分的には似通ってくるかもしれないが、
二郎は特殊すぎてどこにも括ることができない=競合相手がいない状態だ。
本書の言葉を引用させてもらえば「唯一無二のポジショニング」を確保する。
この既存の競争ルールから離れる戦略=ブルーオーシャン戦略を展開できる
のが、二郎の強みであり、「二郎は~」とは最大の金看板なのだとわかる。。
独自路線はともかく、それに対して顧客がいなければ意味がない。二郎がもつ
もうひとつの武器こそ二郎をこよなく愛する「ジロリアン」を抱えていること。
著者による分析は、二郎の作りだす「世界観」と「価値観」がジロリアン発生
に大きな影響を与えているようだ。先述の「尖り」がそのコアにあることは、
言わずもがな。あの二郎なる食べ物は、店舗近くの大学に通う大学生たちの
ニーズを満たしてきたことで形成されており、その二郎という食べ物を食する
(=攻略する)というミッションに挑むことが忠誠心と一体感を生むと著者は
指摘している。なるほど、二郎とは1つの参加型ムーブメントなのかもしれん。
■ 日本に足りないのは二郎的な「尖り」なのか?
著者の指摘の中で非常に納得したのは、こうした「尖り」がグローバル経済下の
日本の映像作品・モノづくり・政治家等に足りない部分ではないか。最近10年が
特に顕著かもしれないが、マーケティング分析が広く利用されることになって、
何となくトレンドや流行に徹したもの、もしくは総合性を重視して万能なモノが
増えてきて、正直なところ色が薄まっている気がする。悪く言えば、媚びている。
だが、例えば、Appleは量販店に媚びることなく、自社製品に絶対的自信を持ち、
スティーブ・ジョブスという最強のセールスマンがそれを自ら伝道しているのだ。
また、メガマックを思い出してもらいたい。今よりメタボだ何だのという言葉が
大きく話題になっていたのに、突き抜けた結果、話題を呼んで成功を収めた。。
日本製品には品質の良さというブランドイメージはあるが、逆に色はみえてこない。
世界という幅広いフィールドでモノづくりが活路を見出すためには「尖り」を出す
ことが重要なのかもしれない。ガラパゴス化とは異なる良い意味での逸脱、脱却を。
よくアイドルを見ていて思うことが「突き抜ければ、それは個性となる」ではないが、
政治家も含めて「突き抜ける」勇気を持てるかどうかなのかもなぁ。それがブレのない
姿勢につながると思うだけに。
それ以外にも、本書では二郎の規模拡大や経営体制等についても書かれていることから
「二郎」を通じて、非常に様々な知識等を得ることが楽しめる。これは本当、おススメ。
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