尊敬するオシム爺の萌える表紙(笑)が目印のナンバー最新号。
タイトルのとおり監督特集。以前、野球書評10番勝負の際にも
書いたかもしれないが、おそらく日本のスポーツジャンル書籍で
最も多いといわれるのが監督本だと思われる。ちなみにナンバー
が監督特集を行うのは「言葉力」と題した722号に続いて2号目。

本特集は、名将といわれる人物たちの若き日・ターニングポイント
を取り上げてみたり、現役の青年監督たちにクローズアップした内容。
入門と銘打っているだけに、どちらかといえば監督の資質の「根っこ」
に迫った内容と言えるのではないだろうか。

名将の若き日を振り返るということで、取り上げられたのはオシム爺。
日本では、オシム氏の功績について、木村和彦『オシムの言葉』でも
取り上げられているが、監督時代のエピソードについては、やはり、
旧ユーゴ監督の話題が中心となっているだけに、日本のオシムファン
でも知られざるエピソードではないだろうか。

証言等を読んでみると手法そのものは、青年監督時代から近いものが
あったようだ。そして、昔から必ずしも財力・戦力に恵まれていない
が、若くて、野心のあるチームを渡り歩いていた印象を改めて受けた。

同じく本書で30代の頃を取り上げた、サー・アレックス・ファーガソン
監督が若くして全権委任型の監督を志向したのと同じで、クラブ全体を
を構築しなければ、勝てる組織は作れないという考えの表れであろう。

また、野村克也監督も珍しく南海ホークス時代、つまり野村ID野球以前
の時代を取り上げている。詳しい野球ファンではご存じだろうが、野村
野球の源泉たるデータを取り入れた戦い方は、現役の南海時代にも運用
していた。また、再生工場や新人発掘もその片鱗を見せてはいたりする。

ただし、大変だったのは南海時代は4番捕手を兼任していたということ。

そこでブレイザーを招集し、攻撃面の指揮を任せたということで守備面
のに専念したことは大きかったようだ。スペンサー氏は「考える野球」
を浸透させたことも大きな功績だろう。例えば、攻撃戦術に長けた参謀
が入れば、もう少し(あくまで少しだ)古田青年監督も上手に行ったの
ではないか。「青年監督には相方が必要だ」が本特集で私が学んだこと。

そうした気持ちは西武・ナベQとソフバン・秋山の両若手監督の話
を読んでも感じたことだ。余談だが、未だにバットを構えた写真等を
見ると、秋山監督はカッコイイと感じる。これも1つのスター性かも。

渡辺氏は自著「寛容力」にも書かれていたが「選手を叱らない」方針
で日本一をとったが、一方で、悪役になる役割の存在が大きかった。

前に野球飲みで諸先輩方も仰っていたが、注目すべきはデーブではなく
離れた黒江氏だったわけだ。東尾時代の須藤豊コーチの存在もそうだし、
いかんせん金髪操縦法は悪役不在では機能しないようだ。渡辺監督の
「真価」として、そして「進化」は寛容性に「厳しさ」の顔を見せる
ことが大切ではないか。叱らないから一歩進んだ手法を模索してほしい。

秋山監督は、昨日のCSを見てもそうだが、本人が体現したような豪快や
野球ではなく、師匠筋にあたる森監督のような手堅い野球を志向している。
本人も述べるように、そうした戦い方も含めて、まだ手探りであるようだ。
だからこそ、教師役として戦術に長けた名参謀を探してほしいものである。

この2人のエピソードを読んで、最後に収録された故・仰木彬氏の回想録
を読むと説得力を感じる。私は一番の名将と聞かれるとノムさんと迷うが
仰木さんを挙げると思う。こんな時代でも「厳しさは必要だ」と思うのは
そこらへんが原点だと思う。

なお、様々なスポーツの監督を幅広く取り扱っている面では野球・サッカー
に詳しくない方でも、オススメできる内容です。ここから是非とも監督本
にも進んでいきたいところ。


最後にいつも思うこと。日本のスポーツ専門誌はオシム氏にいささか
頼りすぎではないだろうか。流石にこう頻繁にインタビューを行ったら
申し訳ない気がする。一方で、丁寧に答えていただいているオシム氏に
改めて感謝の意を伝えたい。

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