「ドームですよっ!ドームっっ!」

中村繪里子さんがこの言葉を発した瞬間、現実がフィクションをオーバーラップした。10周年を迎えた『THE iDOLM@STER』(以下「アイマス」という)が西武ドームでライブを開催した、妄想小説の出だしのようにも思えるのだが、眼前に起こった光景は実際に起こっている現実だったのである。

自分自身、スタジアムライブやフェスにも足を運ぶようになって、何事にも初めての経験ではないのだが、正直、最初の30分くらいは気持ちの上ではフワフワしていた(笑)

〇 アイマスの10年、アイドルの10年

「ドームですよっ!ドームっっ!」はアイマスのキャラクター天海春果の台詞である。

稼働当時の05年、女性アイドルグループでスタジアムライブを実現したものはいなかった。それ以前に、アイドルという存在が世間一般に埋もれていた時期でもあった。

特に歌うアイドルは、代表格だったモーニング娘。をはじめとするハロープロジェクトが、研ぎ澄まされたパフォーマンスで精力的なライブ活動を行っていたものの、世間への露出機会は減少傾向にあり、過去の存在となりつつあった。

アーケード版の稼働当初、「何故、今、アイドルゲームなのか?」と誰しもが思った(当方を含む)。

しかし、アイドルを巡る情勢は10年間で大きく変化した。07年のPerfumeのブレイクに端を発し、AKB48をはじめとする48グループの拡大、アイドル戦国時代の幕開け、ももいろクローバーZのブレイク、さくら学院重音部発のBABYMETALのグローバルな活動、アイドルの市場価値は大きく回復し、再び世間の中で大きく注目される存在となった(注)。

アイマスのアニメ化は、シリーズの人気と併せて、アイドルを巡る状況が大きく変化したことが影響していると思っている。「アイドル」という言葉が持つ意味を回復したからこそ「アイマス」も成長したと双方を見てきた自分は考える。


〇 スピード感の無い成長が持つ重み

10年で辿り着いた約束の地。正直、数年前はたどり着ける場所とは考えていなかったと思う。イベントの締めの台詞であった言葉も、しばらくは「アイマスですよ」と置き換えていたくらいだ。

ただし、小さな1歩ずつだが確実に歩みを止めることなく成長をし続けた。階段で言えば段差を飛ばすことなく、本当に1歩ずつ登ってきた。

08年のGREAT PARTYの頃は消滅してもおかしくない危機感で爆発しそうだった。TDCのライブでは開場前が大混乱で参加したPが自主的に列を形成し、規制入場に対応するという伝説を目撃した。

そんなズンドコ節が止まらないアイマスイベントが、徐々に会場規模を大きくして立派なイベントを開催していく姿を古参のPは経験してきたのだと思う。まるでゲームのプロデュースのように。

近年、アイドル現場に行くと、アイドルグループがオリコン、武道館、紅白のいずれかを口にする場面を耳にする。おそらく、ゴールが不明瞭なアイドルだからこそ、明確な目標を設けることと、そこに向けてスピード感を出すことにも繋がることが良いと思われるからだ。

その点で見ると、アイマス(少なくとも765プロ勢)にはスピード感は全然無かったと思う。だけど、多くのファンを抱えることが出来たのは、その点だと考えたりもする。

こうした側面は、実際のアイドル運営にも一石を投じたくなる部分でもある。バッティングセンターのボールじゃないけど、徐々に速い球に慣れていくことが大事なんですよって話。

〇 最高の景色をありがとう

自分が西武ドームでライブを見たのは5度目だと思う。

今年2月に足を運んだ「乃木坂46 3rd YEAR BIRTHDAY LIVE」、および映画『悲しみの忘れ方 Documntary of 乃木坂46』で流れた公演の映像を見て感じたが、構図としての西武ドームは非常に良い。

この日もビジョンで撮影された映像を見ながら、良い景色が本当に多かったと思う。最高のロケーションで最高の景色を見せたもらった気がする。

中村・今井が最後に見せた握手と抱擁は、『レッスルマニア20』のクリスベノワとエディゲレロのエンディングにも見えた。長い旅路の末に見えた最高の風景という意味でね。

泣くしかないだろ、という場面だった。終わった直後、アイマス最高と叫んだ後、座り込んでタオルで涙をぬぐった。よくわからないけど「10年って長いよ。重いよ」とか言いながら。

アニマス以降、4年間くらいは全然かわかっていないので、本当にこの日まで頑張って応援してきてくれたPの皆さんに感謝しかない。ありがとう、本当にありがとう。

See you Next Stage, Go for New Stage


ダン・グラッデンP

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注:本件については、2年前に書いたブログの中でまとめている。
〇「2013年におけるTHE iDOLM@STERとアイドルに関する考察」
http://81367.diarynote.jp/201302111832399577/

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